《floating man》2025年ミクストメディアPhoto:⻑橋睦 《floating man》2025年 Photo:長橋 睦 《GUNMAN》2025年 ミクストメディア 《Clumsy heart》2018年 ミクストメディア 《RING AND MAN》2024年 ミクストメディア 《small sleep》2019年 ミクストメディア 《Talking Head》2010年 ミクストメディア 《Watcher》2025年 ミクストメディア 《DANCE MAN》2022年 紙にアクリル彩⾊ 《甲冑武⼈⾃転⾞乗⾞出陣影》 2008年 紙にアクリル彩⾊
彫刻の森美術館で開催されている「現代の新しい創作表現を紹介するシリーズ」の第9回展。
「鎧と人間」をテーマに文明社会や人間への好奇心を追求する現代美術作家、野口哲哉。作品は、一見古びて見えるが、すべて樹脂やアクリルといった現代的な素材で作られており、「リアリティー」「多様性」といった作家のコンセプトが凝縮されている。まるで本物と見間違うような肌質の彫刻は、近代日本美術にある芝居的な表情とは違い、アイロニーな印象で、見る人の想像力を刺激する。作品のモチーフは鎧兜だが、過去や現代、未来を生きる人間の姿を肯定的に捉えているのも特徴的。彼はアイコンである鎧兜を「生物の殻」として考え、「殻をまとった人間は決して別次元や芝居事の住人ではなく、時代や環境に対応しただけの姿」と語る。
本展は、1969年の開館当初の姿をとどめる本館ギャラリーを会場に、新作を含めた立体や平面など76点の作品を展示。自然とアートが調和する野外美術館に、野口の幅広い思考と精緻な作品が融合し、誰もが共感できる知的な空間を産み出す。
アーティスト・メッセージ
―鎧を着て見る夢―

「鎧と人間」という要素を手掛かりに絵画や彫刻を作り、作る以上に色々な事を考えて、頭と手を動かす作業を僕はずっと続けてきました。
子供の頃から鎧兜に強い興味をもってきましたが、それと同時に、現代の、過去の、そして未来の人間に強い関心を持っています。僕は鎧兜と同じくらいに人間や世界の事が大好きなのです。だから、鎧の事を「武将を飾った装束」としてではなく、「人間が肉体を守るために作った過去のプロダクト品」だと考えています。
人間はとても柔軟な生き物なので、地球上のあらゆる場所や風土、国や法律に適合することができます。その中で考えもしなかったようなユニークな発明をしたり、時には驚くほど不思議な姿になったりします。それはとてもミステリアスで恐ろしく、僕の好奇心を刺激し続けてきました。プロダクトを着る事で姿が変わってしまった人間の、それでも変わらない本質が硬い殻の中には胎動しています。
人間が誰でも持っている虚しさや孤独、喜びや怒りといったシリアスな姿が、色と形と結びつきながら僕の行き先を照らしています。展覧会では、僕が過去に作った様々な作品を展示しています。作品をご覧になってくれた皆さんが何かを感じ、叶う事なら、ユーモアよりも大切な事が伝われば、僕はとても幸せです。最後に、展示に関わってくださった皆さんに心からお礼を申しあげます。本当にありがとうございます。
野口哲哉
主な略歴・展覧会歴
野⼝哲哉 Tetsuya Noguchi

1980年香川県生まれ
2003年広島市立大学芸術学部油絵科卒業
2005年広島市立大学大学院修了
2016年平成27年度香川県文化芸術新人賞受賞
武具や甲冑、それらを纏った人間をモチーフに、リアリズムの視点から制作活動を続ける。
主な個展に「野口哲哉展-野口哲哉の武者分類図鑑-」(練馬区立美術館、アサヒビール大山崎山荘美術館/2014年)、「中世より愛をこめて」(ポーラミュージアムアネックス/2018年)、「鎧ノ中デ - 富山編 -」(森記念秋水美術館/2019年)、「This is not a Samurai」(高松市美術館、群馬県立館林美術館、刈谷市美術館、山口県立美術館/2021年)、「野口哲哉展-armored space-」(銀座蔦屋書店GINZA ATRIUM/2022年)。主なグループ展に「ART in LIFE, LIFE and BEAUTY」(サントリー美術館、2020年)、「シン・ジャパニーズ・ペインティング革新の日本画」(ポーラ美術館/2023年)など多数。
展示構成・見どころ
Museum in Museum
本館ギャラリーの特性に合わせて作品を展示。ストーリーを感じながら、各展示室を回遊する展示体験は、野外彫刻展示用の空間をも取り込んで、作品の新たな鑑賞方法を提案。
展示室1

野口哲哉展のイントロダクション。浮遊感のある、あるいはコンセプチャルな作品群と美術館の野外展示風景とを関係付けるような配置と構成が広がる。
展示室2

美術館の外に広がる森と連動するような段違いの展示台に様々なポーズの立体作品が配置され、壁には種々の画風の平面作品が並ぶ。
展示室3

美術館展示室に野口作品がコンポジション配置され、圧倒的物量を持つ作品群で静謐な美術空間を作り上げる。
本展の見どころ
- 新作を含む初期からの代表作など約75点を公開。
- 野口哲哉の3年ぶりの大型個展。
- 1969年の開館当初の姿をとどめる「彫刻の森美術館 本館ギャラリー」の特性を生かした展示。
- 本展のための新作を公開。秋頃には新しい作品も展示予定。
開催日 | 2025年7月19日(土)2026年1月12日(月) |
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会場 | |
所在地 | 神奈川県足柄下郡箱根町二ノ平1121 |
アクセス | 箱根登山鉄道「彫刻の森」駅前から徒歩2分 |
TEL | 0460-82-1161 |
ホームページ | https://www.hakone-oam.or.jp/ |
開館時間 | 9:00〜17:00 |
休館日 | 無休 |
料金 | 〈大人〉2,000円 〈大学・高校生〉1,600円 〈中学・小学生〉800円 ※2024年4月1日より上記入館料に改定 |
施設情報 | ピカソ館・アートホール・足湯・レストラン〈飲茶・ビュッフェ〉・カフェ・ショップ |
駐車場 | 有り(有料) ・美術館来館:〔普通車〕500円(〜3時間まで/以降1時間ごとに500円加算) |
支払い |
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更新日 : 2025.07.29