
春、生命が再生する時間。テクノロジーが社会を覆う現代で、私たちは身近な自然の驚異や土地の記憶、人間の根源的な力を見つめ直し、鋭敏に感じ取ろうとしている。本展覧会では、アートにおける飛躍する力に光をあて、人間や世界の奥底から春の芽吹きのようにわきあがる鼓動を宿し、私たちの存在と感性をゆさぶる絵画、彫刻、工芸、映像、インスタレーション作品などを紹介。
本展の見どころの1つになっているのは、開館以来初めて「箱根」に焦点を当てて展示される、箱根町立郷土資料館収蔵の貴重な浮世絵コレクションや、国内外アーティストによる箱根を題材にした作品群。大巻伸嗣が手がけたインスタレーションや現代美術作家の新作を通し、大地や自然に脈打つ生命の在りようを探る試みも。さらにルソーの油彩画4点をはじめ、絵画の表現に飛躍をもたらしたモネやゴッホなど、西洋近代絵画のコレクションも展覧。
この地に培われた風土と記憶を出発点に、過去と未来、ここから彼方へとつながる想像の旅へと観る者を誘う。約120点に及ぶ出品作品の創造の鼓動が、観る者と共鳴し、彼方への旅へと誘う。静かに、あるいは力強くわきあがる作品の響きと共鳴し、時空を超えて豊かに躍動する創造の鼓動を体感しよう。
■主な出品作家:歌川広重、五姓田義松、青木美歌、名和晃平、大巻伸嗣、丸山直文、イケムラレイコ、小川待子、杉本博司、チャールズ・ワーグマン、クロード・モネ、ポール・ゴーガン、フィンセント・ファン・ゴッホ、アンリ・ルソー、ツェ・スーメイ、パット・ステア、アンゼルム・キーファー ほか
■関連プログラム:担当学芸員によるギャラリートーク
〔日程〕2026年 2月 14日(土)、3月 14日(土)、4月 18日(土)、5月 16日(土)
〔時間〕各日 14:00~14:40
〔定員〕30名(先着順)
〔会場〕ポーラ美術館 講堂および展示室
※詳細は Webサイトにて
「SPRING わきあがる鼓動」見どころ
箱根に焦点を当てた初の展覧会
ポーラ美術館の開館以来はじめて「箱根」という土地そのものに焦点を当て、箱根町立郷土資料館が収蔵する貴重な浮世絵コレクションや町指定重要文化財の絵画をはじめ、東海道の風景から触発された表現を、江戸時代から現代に至るまで横断的に紹介する。古来より旅人を惹きつけ続け、アーティストの創造力を呼び覚ます箱根の魅力に迫る。
現代美術家たちによるインスタレーションや新作を紹介
大巻伸嗣が手がけた、箱根の自然と共鳴するスケールの大きなインスタレーションや、世界的に活躍する現代美術家・杉本博司、陶芸家・小川待子による新作など、大地の奥深さや自然の営み、そこに脈打つ生命の在りようを探り出し、それらとの対話を通じて表現された作品を展示。絵画、彫刻、工芸、インスタレーション作品など約120点の作品を通じて、多様な表現と創造を紹介する。
ルソーによる油彩画4点を含む、ポーラ美術館の絵画コレクション
西洋近代絵画コレクションからは、絵画の表現に飛躍をもたらした画家たちの作品を紹介する。光と色彩の揺らぎに対峙したモネやゴッホ、ゴーガン、色彩の科学と向き合ったスーラやシニャックのほか、ポーラ美術館が誇るアンリ・ルソーのコレクションなど、未知の土地への旅や内なる旅により生み出された作品群を展示。
「SPRING わきあがる鼓動」 展覧会構成
プロローグ/大巻伸嗣

約50万年前に火山活動が始まり、3000年ほど前に現在の姿となった箱根。火山地形の博物館とも呼ばれる箱根には、国内で有数の豊かな自然が広がっている。本展覧会のプロローグで表現したのは、そんな豊かな景観を映し出す森とアートの共演。大巻伸嗣による布と空気の流れを用いたインスタレーションは、上昇と下降、膨張と収縮によって絶えず形を変えながら、大地を動かすような巨大なエネルギーを想起させ、作品との一体感が味わえる。
1. はじまりの山―箱根

険しい山々と富士山を望む芦ノ湖周辺は、修験道の場として人々の信仰を集め、やがて街道の要衝として宿場が整い、湯治(とうじ)や旅の文化が発展した。歌川広重の「箱根越え」の浮世絵には、夜明け前に小田原を発ち、提灯やたいまつの灯火を頼りに急坂を進む旅の過酷さと緊張感が刻まれている。日本の絵師だけでなく、海外から箱根を訪れた旅する画家たちは、高揚感とともに箱根を絵画化し、だれもが憧れる景勝地のイメージを形成していった。とりわけ富士山の風景は、浮世絵や水彩、油彩画、写真など、さまざまなジャンルにおいて取り組まれており、アーティストたちが日本の美のシンボルに挑んだ多様な成果をパノラミックに紹介する。
2. ストーリーズ/イケムラレイコ、丸山直文

古来より神話や民話の舞台となってきた箱根は、現代のアーティストにとっても尽きることのない創造の泉であり続けている。イケムラレイコは、歌川広重《東海道五十三次》との対話を経て、不可思議な生き物や精霊たちが生息する、幻想的な山あいの湖畔を描き、時空を超えた物語の詩的な情景を提示している。丸山直文は、豊かな水脈を地中に抱く、箱根の仙石原を取材し、萌え出る光と色彩に満ちた瑞々しい風景を描出。両者の絵画は、土地に宿る物語と自然のリズムを織り込みながら、鑑賞者を憩いや漂泊へと導く。
3. 地水火風/小川待子、パット・ステア

陶芸家の小川待子は、鉱物の美しさに魅了され、土やガラスが熱や重力、そして長きにわたる時間の作用を受けて変容していくプロセスを、うつわや結晶体としての立体作品に留めている。また、画家のパット・ステアは、絵具をカンヴァスに滴らせ、その流れを重力に委ねることで、偶然から生まれる律動や形象を追い求める。両者の共通点は、悠久の時の深淵から美を呼び覚まそうとする姿勢で、土やガラス、あるいは絵具の顔料という素材が、人の手わざや地・水・火・風の作用を受けて変容を重ね、地上の秩序を超えた美しさを出現させる試みである。
画像:「SPRING わきあがる鼓動」展 3. 地水火風/小川待子、パット・ステア 展示風景 Photo: Ken Kato
4. エコー/ツェ・スーメイ

《エコー》(2003年)は、アルプスの雄大な山岳風景を舞台に、チェロ奏者でもあるアーティスト自身が奏でる音が岩肌に反響し、空間全体へと不規則に広がっていく様を記録した映像作品。その音の反響は複雑に交差し、やがては堅固な山々そのものが音を発しているかのような感覚をもたらす。峻厳な自然と対峙する小さなアーティストの姿は、人間が崇高さを享受しようとする象徴として立ち現れる。そして鑑賞者は、響き合う音と映像を通じて、自然と人間、過去から未来への時間との壮大な対話へと導かれる。
画像:「SPRING わきあがる鼓動」展 4.エコー/ツェ・スーメイ 展示風景 Photo: Ken Kato
5. 共鳴の旅―彼方へ

ポーラ美術館の絵画コレクションを中心に、ヨーロッパが19世紀後半から現代まで続く崩壊と再生の時代において、新たな飛躍を生んだ画家たちの創造の旅を辿る。印象派のモネやゴッホ、ゴーガンは、光と色彩の揺らぎに対峙し、刹那の儚さと永遠への希求を絵画に託した。スーラやシニャックは色彩の科学と出あい、水辺の光景を点描で再構築し、未来のデジタル技術を予見する律動を発見した。ルソーやルドンが描いた、意識の深層から湧き出る幻想的なヴィジョンは、果てしない世界の暗示として現れる。第二次世界大戦後のドイツを代表するアーティストのアンゼルム・キーファーは、死と再生のテーマを大地と歴史の記憶に重ねて描き出し、揺るぎなき精神の道行きを提示している。これらの作品が宿す画家たちの鼓動は、観る者と共鳴し、彼方への旅へと誘う。
エピローグ/名和晃平

生命と宇宙、感性と科学技術の関係をテーマに、様々な素材の物性を活かしながら、多彩なイメージを生成する名和晃平。デジタル画像の「Pixel(画素)」と、生物の最小構成単位「Cell(細胞)」をかけ合わせた独自の概念「PixCell」を具現化した彼の彫刻は、自然の表象としての動物の剥製を、最先端の接着技術を用いて人工クリスタルボールで覆い、両者の境界を曖昧にすることで、新たな視覚体験を生み出す。視点によって異なる距離感は、鑑賞者と作品との間に生まれる関係性や、作品が持つ意味合いを再考させる。2体の「PixCell-Deer」を対峙させ、不可視を可視化した空間が展覧会のエピローグを飾る。
画像:「SPRING わきあがる鼓動」展 エピローグ/名和晃平 展示風景 Photo: Ken Kato
レストラン アレイ 展覧会スペシャルコース SPRING RISING

白で統一されたインテリアが印象的なレストラン アレイ。窓外に小塚山の眺望が広がる、ゆったりとした空間で、展覧会にちなんだスペシャルコースが味わえる。
※レストランは入館せずに利用可能
〔営業時間〕11:00~17:00(L.O. 16:00)
展覧会スペシャルコース SPRING RISING
『SPRING わきあがる鼓動』展に寄せて、”spring”にインスピレーションを受けた特別メニュー。「春」以外にも「泉」や「湧き出る」「跳ねる」という意味をもつspring。そんなさまざまなspringを感じながら楽しんで。
>>メニュー詳細はこちら
| 開催日 | 2025年12月13日(土)2026年5月31日(日) |
|---|---|
| 会場 | |
| 所在地 | 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285 |
| アクセス | 箱根登山鉄道「強羅」駅から施設めぐりバスで約13分 〔東名〕御殿場ICから約25分 |
| TEL | 0460-84-2111 |
| ホームページ | https://www.polamuseum.or.jp |
| 開館時間 | 9:00〜17:00 (最終入館 16:30) |
| 休館日 | 企画展・会期中無休(悪天候による臨時休館あり) |
| 入館料 | 〈大人〉2,200円 〈大学・高校生〉1,700円 〈中学生以下〉無料 |
| 施設情報 | レストラン・カフェ・ミュージアムショップ |
| 駐車場 | 有り(有料・1日 700円) |
更新日 : 2025.12.26
